今年の全国学力テスト
今年も全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が実施され、その結果が公表されました。全国学力テストは文部科学省が毎年、小学6年生と中学3年生を対象に行っていて、今年は4月14~17日に行われました。実施教科は、小学校が国語と算数と理科、中学校が国語と数学と理科で、理科の実施は3年ぶりでした。調査結果によると、教科に関する調査の全国の平均正答率は、小6の国語が67.0%(前年度67.8%)、算数が58.2%(前年度63.6%)、理科が57.3%、中3の国語が54.6%(前年度58.4%)、数学が48.8%(前年度53.3%)となっており、国語、算数、数学とも去年の正答率を下回りました。特に中学校の国語は、過去最低となった去年からさらに下がっています。(中3の理科は、複数の問題セットを用意して生徒ごとに異なる種類の問題を解くIRT(項目反応理論)という方法でテストされているため、平均正答率は算出されない、とのことです)
記述式の問題に課題
小学生、中学生の国語では、正答率を押し下げたのは記述式の問題です。記述式問題の正答率は、小学生は59.0%、中学生が25.6%で、選択式や短答式が60〜70%台だったことを考えると、大きな差があることが分かります。無解答率が3割の問題もあったそうです。生徒へのアンケート調査と合わせて分析すると、国語の授業で「文章を書いた後に読み手の立場に立って読み直して文章を整えている」と回答した生徒の正答率が高い傾向にありました。文科省は「段落の長さや順序、語順といった叙述の仕方を確かめることが大切。伝えたい内容が伝わる文章になっているかを考え、文章を整える学習が効果的だ」としています。小学生の算数で正答率の低さが目立ったのは分数や割合などに関する問題です。10%増量したハンドソープの内容量が増量前の何倍に当たるかを選ぶ問題の正答率は41.3%でした。正解は「1.1倍」ですが、4割の児童が「0.1倍」、1割超が「10倍」と誤っていました。文科省によると「過去の学力テストでも同様の課題がみられた。言葉や図、式を関連づけながら数量の関係を考察できるようにする学習が重要だ」とのことです。
中学生の数学では、「データの活用」の正答率が59.0%と高かった一方、「数と式」「図形」「関数」はいずれも50%を下回りました。また、数学の基本的な概念や用語の理解にも課題がみられたといいます。例えば、1から9までの数の中から素数をすべて選ぶ問題の正答率は32.2%でした。誤って1を含めて解答した生徒が半数以上いたようです。
小学生の理科は、分類ごとに見ると「地球」に関する問題の正答率は66.9%と高く、「エネルギー」「粒子」「生命」に関する問題の正答率はいずれも5割程度と低迷しました。水中にいる生物の動画を視聴し、呼吸を行う生物を選ぶ問題は29.8%と低い正答率でした。動画をよく見て違いを理解したものの「動かない生物は呼吸をしない」と捉えるなど、知識の活用が不十分だったとみられます。
勉強時間、読書時間の減少
学力テストと併せて実施したアンケートでは、生徒の学習状況などが調べられました。平日に学校の授業以外で勉強する時間について、1日で「1時間以上」と答えたのは小学生で54.3%、中学生で61.7%で、いずれも減少傾向にあります。2021年度と比べると、それぞれ8.5ポイント、14.1ポイント下がっています。平日に学校の授業以外で勉強を「全くしない」「30分より少ない」と答えた生徒はそれぞれ2割弱に上り、文科省は「家庭でも最低限の学習時間を確保してほしい」と呼びかけています。
また、「本離れ」の傾向も引き続きみられました。平日に学校の授業以外で読書(教科書や参考書、漫画などを除く)を1日あたり「30分以上」すると答えた小学生は31.3%、中学生は21.4%でした。2021年度よりそれぞれ6.3ポイント、7.5ポイント低い数値です。中学生では「全くしない」が4割を超えました。各教科の正答率と組み合わせて分析すると、当然のことながら読書時間が長い生徒ほど正答率が高い傾向がみられるので、勉強時間の確保とともに、読書の重要性も改めて確認されたと言えるでしょう。